斉藤当日配布資料

ジェンダーコロキアム2004・12・16

それぞれの場における女性運動の対抗戦略

斉藤正美(富山大学非常勤講師, シャキット富山35会員)

はじめに

  • 「ジェンダーフリー」:官僚+学者によって持ち出された概念(山口2004、山口報告)
  • 「男女共同参画」=ジェンダー・フリー?:官僚+学者によってつくられた概念(大沢2002)

「『男女共同参画』は、“gender equality” をも越えて、ジェンダーそのものの解消、『ジェンダーからの解放(ジェンダー・フリー)』を志向するということ、これである」(大沢2002:13)

  • 「ジェンダーフリー」を自粛して「男女平等」を掲げた運動ばかりではなく、「女性問題解決」から「男女平等」へと進めてきた運動もある(山下報告)



1. 男女共同参画条例における「ジェンダーフリー」

男女共同参画条例は、家父長的な逆風をはね返す根拠?

条例をつくる必要性=「男女共同参画推進に対する逆風をはね返す根拠となります」(橋本2001:27)

「条例をつくるとどのような効果があるでしょうか」「男女共同参画の意味を曲解して、これまでの家族の絆を破り、社会システムを壊すと言って敵視する勢力も増してきています。そのためにも、条例を策定して、財政的措置や推進体制をきちんと条例に書き入れることが必要なのです。そのことにより、財政難が続いたり、家父長的な動きが強くなって、男女共同参画担当部局や女性センターの安易なリストラや予算の大幅削減ができないようになります」(橋本2001:27)

1)男女共同参画条例における「ジェンダーフリー」:意味が定まらない

a. ジェンダーフリー:性差、性役割、性別役割分担意識?

「市民一人ひとりが男女の生まれながら持つ性差を互いに尊重し、固定的な役割分担の概念にとらわれることなく」「男女共同参画推進にあたり、男女が、ジェンダー・フリーを理解することで、個性と能力を発揮する機会が確保され、人権が尊重されること。(ジェンダー・フリー 男女別に期待される役割やイメージなどの歴史的、社会的及び文化的に作られた性差により差別されないことをいう}」(長井市男女共同参画推進条例 第三条基本理念など)

「男女共同参画の推進は、性別による固定的な役割分担を反映した、社会における制度又は慣行をなくし、ジェンダー・フリーの実現に努めるとともに、これらの制度又は慣行が、男女の社会における活動の自由な選択に対して影響を及ぼすことのないように配慮されなければならない。(ジェンダー・フリー 人々の行動又は生き方を、ジェンダーによって枠にはめることなく、男女が共に多様な生き方を許容する社会をつくろうという考え方をいう。)(福島市男女共同参画推進条例 第三条基本理念)

「(ジェンダーの解消) 何人も、ジェンダーにとらわれることなく行動するようにするとともに、ジェンダーによる固定的な役割分担等を助長する制度及び慣行を無くすよう努めなければなりません」(伊勢市男女共同参画推進条例 第8条)

b. 「男らしさ・女らしさを否定することなく」:性差意識啓発への反発

「男女が、男らしさ女らしさを一方的に否定することなく互いの特性を認め合い、互いにその人格と役割を認めるとともに、尊厳を重んじ合うこと、男女が性別によって法の下の平等の原則に反する取り扱いを受けないこと、男女がその特性と能力を発揮する機会が確保されることその他の男女の人格的平等が尊重されるよう務めること」(宇部市男女共同参画推進条例 第三条基本理念)

「男女が、男らしさ女らしさを一方的に否定することなく互いの特性を認め合い、個人としての尊厳が重んじられ、性別による差別的取り扱いを受けることなく能力を発揮する機会が確保され、男女の人権が尊重されること」(高山市男女共同参画推進条例 第三条基本理念)

「『男だから』・『女だから』といったジェンダーではなく、それぞれの個性を重視し、『その人らしさ』を大切にする家庭になること」(男女共同参画による出雲市まちづくり条例 第四条家庭において実現すべき姿)

2)家父長的市長と男女共同参画条例

a. 富山市森雅志市長の「危ないジェンダーフリー」論(資料1)

b.富山市男女共同参画推進条例

「新たな時代に即した『ふるさと富山』を築くため、男女共同参画社会基本法を尊重すること、男らしさ女らしさを一方的に否定することなく、男女の人権を尊重すること、また、家庭、地域、職場、学校その他あらゆる場において、男女が、相互に協力・協調しつつ、主体的に参画すること、中でも、家族の大切さを十分に認識し、お互いの努力と協力のもとに、愛情豊かな家庭の創造に努めること、併せて地域社会の構成員としての責任と役割を自覚することが、市民一人ひとりに求められる」(富山市男女共同参画推進条例 前文)

  • 「男女共同参画」条例は、家父長的な逆風をはね返すどころか、家父長的首長に逆用

3)合併協議において無視される条例

山下報告:各地の法定合併協議会では積極的格差是正策がとられていない。

「男女平等」よりあいまいな「男女共同参画」へのずらし

  • 基本法や条例はできても、実際に使っていかないと役に立たない



2. それぞれの場における女性運動の戦略

1)女性学者が行政と一体化し、「ジェンダーフリー」という意味が定まらない呪文詞を導入することによって女性運動を体制順応型に変えた

2) 行政密着・トップダウン型の女性運動から、権力関係を変える女性運動へ

「女性団体・市民のエンパワー」:「女性団体・市民は、自ら条例案を策定したり、条例案の策定に関わる過程で、行政の仕組みがわかり、エンパワーすることができます」(橋本2001:22頁)

参考文献

  • 大沢真理2002「女性政策をどうとらえるか」『改訂版21世紀の女性政策と男女共同参画社会基本法』ぎょうせい:2-26
  • 橋本ヒロ子2001「条例をつくる必要性」山下泰子・橋本ヒロ子・斎藤誠『男女共同参画推進条例のつくり方』ぎょうせい :11-28
  • 山口智美2004「『ジェンダー・フリー』をめぐる混乱の根源1」『We』11月号:20-21
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