男女共同参画条例:「ジェンダーフリー」より「積極的格差是正策」を

執筆者:斉藤正美

『ふぇみん』2002年11月15日「意見・創見」欄に掲載。前回「ふぇみん」9月25日 掲載原稿のタイトルが変えられた結果、誤読されるということで改めて投稿をお願いしたのでした


わたしの住む富山県高岡市でも男女平等推進条例の制定に向けて、公募の市民や地域で活動する団体のメンバーらが条例検討専門部会の委員に選ばれた。9月6日には、部会の市民委員ら総勢12名がバスを仕立て福井県武生市に三木勅男市長を訪ねた。三木市長は「男女平等オンブッド」(苦情処理機関)の設置を盛り込んだ先駆的な条例を制定している。その日は、折しも三井マリ子さんがその「男女平等オンブッド」に就任された日であり、お話を伺えた。その後、訪問団に参加した議員は、高岡市9月議会で条例に苦情処理窓口をと注文をつける一方、女性団体は市長に「男女平等オンブッド」を要請する意見書を提出するなど武生行きの影響が広がった。

「条例の基本的考え方」(URL (.pdf))を踏まえ、現在、市民委員が重要だと考えて押しているのは、次の3点である。1)行政の付属機関に女性を4割にする、2)市内で活動する事業者に男女平等推進状況の調査を実施、女性を活用していない現状に気づいてもらう、3)対応が進展しない場合に訴える先として「男女平等オンブッド」を設置する。加賀藩を支える商工業の町として栄えた高岡市だが、現在はご多分に漏れず商工業に勢いがない。そこで活用されていない女性層のパワーで経済再生を図るという「積極的格差是正措置(ポジティブアクション)」を条例制定の基本に据えようというのである。市民委員は、市長の決断に期待を込めている。

ところで、全国各地で進行している男女共同参画条例の制定において、「女らしさ/男らしさにとらわれない」という「ジェンダーフリー」という考え方を入れるかどうかが攻防の的となっているという(『ふぇみん』9月25日号特集「女性政策バッシング」)。しかし、「性別役割意識の変更」は、先に社会のしくみを変えない限りどだい無理だ。他方、「ジェンダーフリー」に反対する側から「男らしさ/女らしさ」を条例に規定する動きもあるが、今の若者が素直に従うとはとても思えない。性役割や特性という「心のありよう」より、若い女性や男性が働きやすい政策こそ条例に盛り込む必要がある。

そもそも「ジェンダーフリー」は、「男女のジェンダーコードの『段差』を発見し、これを『平ら』にする試み」として東京女性財団が90年代半ばに用い始めた和製英語である。しかし、最近では「男女同質な社会にする」と主張しているといった拡大解釈も目立つ(例えば、「危ない『ジェンダーフリー』」森雅志富山市長ホームページ:URL (HTML))。「ジェンダーフリー」という言葉は、このようにあいまいな概念として一人歩きしている。

条例で実現すべきは、「ジェンダーフリー」という理念を書き込むことではなく、「性差別を解消する」ための積極的是正策の導入である。条例案が「ジェンダーフリー」というあいまいな言葉の取り扱いで紛糾している間に肝腎の「性差別解消」のための施策への目配りがなくなり、条例が骨抜きになってしまうことは避けなければならない。(1329字)

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