タグ: 条例

男女共同参画条例:「ジェンダーフリー」より「積極的格差是正措置」を

執筆者:斉藤正美

2002年11月8日、『朝日新聞』「私の視点」に投稿しましたが、掲載されなかったボツ原稿です。 以上は、いずれも2002年秋に、斉藤が山口さんらとディスカッションした内容を『ふぇみん』などに投稿した原稿です。2004年秋に「今になって批判するな」と言われました。しかし、2002年時かられっきとした批判をしていたことを示すためにここにおいておきます。

各地の男女共同参画条例の制定過程において、「男らしさ/女らしさにとらわれない」という「ジェンダーフリー」の理念を入れるか入れないかが攻防の的となっている(10月22日付け「ポリティカにっぽん 男女共同参画バックラッシュ」)。

「ジェンダーフリー」は、元来、東京女性財団がバリアフリーにヒントを得て用い始めた和製英語的な用法である。インターネットでgender-freeを検索すれば、日本の男女共同参画行政のサイトが多出するので驚く人も多いだろう。東京女性財団の説明では、「男女のジェンダーコードの『段差』を発見し、これを『平ら』にする試み」とある。

男女共同参画条例は、1999年に施行された男女共同参画社会基本法を実質的に根付かせるための地域における取り組みである。同法は、国連が1979年女性差別撤廃条約を採択した後、各国が批准し「性差別禁止法」や「男女平等法」を制定したという流れに連なる。この法律は、「政治的決着」によって、名称から「男女平等」がはずされ、「男女共同参画」社会基本法となった経緯がある。しかしながら、英語名称は「ジェンダーイクオリティ(男女平等)」社会と定義されているように、基本理念は「性差別の是正」や「男女平等」である。これは、女性が働きやすい社会のほうが男性も自由な生き方を選択できる、女性の労働力率が高いほど出生率も高い、という理解が広まったために、少子社会に歯止めをかけるためには「男女平等社会」しかないということで成立に至ったものだ。

ところが、地方自治体における条例制定においては、「性役割を変える」という「ジェンダーフリー」の理念が先行されがちである。男女平等社会づくりにまず必要なのは、「男女平等」を達成させるための「積極的格差是正措置(ポジティブアクション)」などの具体策である。入札時に事業者に男女平等推進状況を報告してもらう、行政の付属機関の男女比の達成目標を設定するなどの「差別解消策」や、そうした対応が進展しない場合に訴える先としての苦情処理機関設置こそ条例に真っ先に取り入れられる必要がある。

「性役割」や「性別役割分担意識」を変えることに効果があるのは、社会の制度やしくみを変えることである。性役割や特性という「心のありよう」を条例で規定しても効果はあまり期待できないのではないか。「ジェンダーフリー」に反対する側から「男らしさ/女らしさ」を条例に規定する動きもあるが、当代の若者が素直に従うとも思えないことからもその効果のほどは容易に想像できよう。

条例で強調すべきことは、「性役割の変更」を規定することではなく、個人が「性別による差別的取り扱いを受けない」ための積極的改善措置である。条例案が「ジェンダーフリー」というあいまいな言葉の取り扱いで紛糾している間に肝腎の「性差別解消」のための施策への目配りがなくなり、条例が骨抜きになってしまうのでは本末転倒である。

「男女共同参画」社会基本法という名称が、「平等」を避けた政治的決着であるからといって、「性差別解消」という条例の達成目標まで揺らぐことがあってはならない。(1288字)

広告