2009年6月 日本女性学会「ジェンダーフリー」と「バックラッシュ」を再考する

2009年6月、日本女性学会にて「ジェンダーフリー」と「バックラッシュ」を再考する、というテーマで、プレ研究会と、学会大会でのワークショップを開催しました。女性学会ニュースに掲載された、研究会およびワークショップの報告です。

プレ研究会報告

2009年大会ワークショップ「『ジェンダーフリー』『バックラッシュ』を再考する」において話し合う論点を事前に協議する「プレ研究会」を、2009年6月14日(13時-16時半)、東京ウイメンズプラザ視聴覚室において開催した。参加者は21名。インターネットを通じた告知により、学会以外からも幅広い参加があった。

荻上チキ、山口智美の司会により、ワークショップ発言予定者の井上輝子、荻上チキ、金井淑子、斉藤正美、細谷実、山口智美、それにプレ研究会のみ参加の木村 涼子から、ジェンダーフリーをめぐる論争について現在どう考えているかの報告がなされた。その後、発言者どうし、および会場を交えた議論が行われ、女性学会内部では概念、理論的なことへの関心が高い一方で、バックラッシュの時代背景や実態分析が十分なされておらず、弱者男性のルサンチマンが原因であるというような曖昧な論が多く提示されている問題点も指摘された。
この問題について異論をぶつけあい、議論するという機会が今まで女性学会の中で欠けていたことを考えれば、対面で議論する場を設定できたという面では意義深く、立場の相違点の確認をし、議論のスタートラインにたつことができた。また、ジェンダーフリー誤読問題を検討し直すなど、女性学のバックラッシュへの対応のストラテジーをしっかり検証していく必要性を確認した場となった。 一方、女性学のインターネット対応をめぐる諸問題については、重要であるが十分に検討されていないという指摘が出たにもかかわらず、この場でも議論ができず、今後の課題として残った。(斉藤正美)

ワークショップ報告

最初に、女性学会の中心を担ってこなかった山口智美、荻上チキ、斉藤正美から、女性学のジェンダーフリー論争、バックラッシュ対応のストラテジーに関する問題提起があった。共通して指摘されたのは、現場、ネット上双方のバックラッシュ現象の実証研究の欠落、女性学のネット対応のまずさ、地域現場からみえる、女性学の行政依存のトップダウン方式の限界などだった。それに対して、女性学会の幹事をつとめた伊田広行、金井淑子、細谷実、井上輝子、および、学会外から小山エミが、コメントを述べた。男女共同参画政策や、女性学のジェンダーフリー推進策とバックラッシュ対応をどう評価するか、「バックラッシュ」現象をどう理解しているかなどに関して議論が進む一方、立場の違いも浮き彫りになった。聴衆が80名以上と、大教室がほぼ満員となり、会場発言も多く、後日には参加者のブログ上での報告や議論もあり、このテーマへの注目度の高さが伺われた。(山口智美)

以下は、個人ブログなどに掲載された報告のリンクです。

プレ研究会

ワークショップ

上記ブログに掲載されていない記事リンクは以下。

ワークショップでの配布資料 『「ジェンダーフリー」「バックラッシュ」をめぐるこれまでの女性学での経緯』