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mixi内でのバックラッシュをめぐる議論に関して 「社会運動とネット、メディア研究会」2009.12.26報告内容メモ (山下渉)

執筆者:山下渉

1.mixi内でのバックラッシュをめぐる議論を今から振り返ってどう考えるか。

内容レベルでは、他のネット空間で繰り広げられた言論戦に比べて際立った違いは無いと考えられる。但し、mixiならではの展開や問題はみられた(下の3にて詳述)。

2.フェミニズムのネットにおけるバックラッシュ対応に関する考察
同上。

3.mixiという媒体のコミュニケーション特性やその可能性および限界について
mixiのもつ
a.参加者の同一性は保たれている
b.匿名性は高い
c.「マイミクシィ」という制度
d.「コミュニティ」「日記」にみられる多層構造内でのコミュニケーション
という特性から下記の問題点が考えられる。

mixiは、招待制ではあるが、参加人数は多いのでもはや「クローズドな場」とはいえず、ひとつの公共空間になっている。しかもその内部で日記、コミュニティ、と重層的に閉鎖性と公共性が多層構造になっている。その場でのやりとりをどう扱うか? は難しい。

(a)(b)について:招待制と参加時の資格審査はあるものの、本名/通称ともに実生活での名前を明かしている参加者は多数とはいえない。ゆえに、(a)によって特定の参加者への攻撃が容易にできる一方で、(b)によって攻撃する側は匿名性によってオフラインにおよぶ責任追及からは免れやすい、ということも起こり得る。

(c)(d)について:各々の参加者同士の関係が「マイミクシィ(マイミク)=友人」か否かが外部からオープンになっている。「マイミク」は「友人」と称されるように2者が互いに承認しあってはじめて成立する。ゆえに、マイミクであることは単に相手を参照するだけではなく「相手を肯定的な存在として扱いあう」関係であるという前提がmixi全体で基本的には共有されている。
具体的には、個々のテーマ(ジェンダー、フェミニズムに関するもの)について「対話」「議論」が為される際に、テクストレベルでの内容に即しての応答よりも、「発言者たちのマイミク関係」「特定の思想/政治的傾向をもつコミュニティの参加者」といった属性を持った者たち同士の集団戦が起こりやすかった。
個々のテーマによって有志が集まる「コミュニティ」、参加者個々人が持つ「日記」といった空間ごとに、公開範囲が任意に設定できる。そのことが、参加者間での「mixi内が公共性をもつ場なのか? プライベートな場なのか?」という認識に差が生じやすい。また、複数の場を使い分けることで、「オープンな空間での発話」と「クローズドな空間での発話」をコントロールすることができる。それはそのまま、マイミク/非マイミクによる情報の流通経路を操作する権力ゲームの発生である。そうした”つながり”が「マイミク」という制度によって可視化と固定化がなされることが、かえって自由で広がりのあるコミュニケーションを阻害してしまう面があると考える。

<mixi内の「バックラッシュ」関連参照先コミュニティ>

『戦争反対!』コミュニティ http://mixi.jp/view_community.pl?id=14723
内にて、2006年頃「慰安婦」問題等で紛糾
該当トピック>【フェミニズム&ジェンダーと戦争】http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=2488180&comm_id=14723 他
『「ジェンダーフリー」ブッタギリ』コミュニティ http://mixi.jp/view_community.pl?id=165104
『「反ジェンダーフリー」斬りコミュニティ』 http://mixi.jp/view_community.pl?id=258004
『フェミニズム』コミュニティ http://mixi.jp/view_community.pl?id=53049
(2006年10月~約1年、wataru=山下渉が管理人として運営)
山下 渉(やました わたる)