『社会運動の戸惑い ― フェミニズムの「失われた時代」と草の根保守運動』 山口智美・斉藤正美・荻上チキ著 勁草書房 2012年
(タイトル英訳 Tomomi Yamaguchi, Masami Saito and Chiki Ogiue. Social Movements at a Crossroads: Feminism’s “lost years” vs. grassroots conservatism. Tokyo: Keiso Shobo 2012)
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概要
00年代、フェミニズムと保守運動はなぜ衝突したのか?地域やネット上での保守運動の展開とフェミニズムの入り込んだ隘路を描く。
男女共同参画事業の名の下に、条例づくりや事業の任い手となったフェミニスト。それを中央からおりてきた政策と捉え、反発した保守運動。「バックラッシュ」として、地域やインターネット上で広がったこの衝突の実際をフィールドワークと双方への丹念な聞き取りから明らかにする。フェミニズムが本当に取り組むべき課題のために。
この本について
まえがきを公開しました。
この書籍の出版にあたって、当サイト運営者でもある山口智美、斉藤正美、荻上チキ、そして小山エミによる座談会が行われました。山口・斉藤・荻上はこの書籍の共著者でもあります。
山口智美・斉藤正美・荻上チキ著『社会運動の戸惑い』発売記念・ステマ大会(ウソ【前編】【後編】
目次
まえがき
第1章 「ジェンダーフリー」をめぐる対立 (山口智美・荻上チキ)
1 「ジェンダーフリー」と「男女共同参画」の誕生
2 反フェミニズム運動とジェンダーフリー批判
3 「バックラッシュ」の退潮とフェミニズム
第2章 地方からのフェミニズム批判 ー 宇部市男女共同参画推進条例と『日本時事評論』(山口智美)
1 日本時事評論との出会い
2 基本法から「モデル条例」へ
3 『日本時事評論』とは?
4 ひっくり返された宇部市男女共同参画条例案と保守の動き
5 「モデル条例」への反発と地方議員の役割
6 日本時事評論の役割
7 宇部条例は「歯止め」の役割を果たしているのか
8 宇部条例への注目と「モデル条例」のアイロニー
9 フェミニズムをどうみているのか
10 男女共同参画の10年間は何だったのか?
第3章 千葉県に男女共同参画条例がない理由 ー 条例制定運動の失敗と保守の分裂(山口智美)
1 唯一条例がない県・千葉
2 男女共同参画条例案をめぐる顛末
3 「良識的な条例づくり」をめざした日本会議系保守運動
4 保守の分裂
5 フェミニストの動きと千葉県条例
6 条例廃案後の千葉県と、運動の衰退
7 千葉県条例をめぐる運動が提示した課題
第4章 「性的指向」をめぐって ― 宮崎県都城市の条例づくりと『世界日報』(斉藤正美・山口智美)
1 フェミニズムへの「バックラッシュ」と世界日報
2 都城市男女共同参画社会づくり条例
3 条例への反対の動き
4 旧条例の制定から新市長による条例再制定まで
5 世界日報によるインターネット戦略
6 条例をめぐる係争から見える課題と「市民参加」の内実
7 都城のこれから
第5章 男女共同参画とは何か ― ユー・アイふくいの図書問題をめぐって(斉藤正美)
1 男女共同参画センターの運用
2 推進員活動をしていた「バックラッシュ派」
3 男女共同参画推進員という制度
4 図書問題
5 インターネットの活用
6 現在の福井の男女共同参画政策
7 「男女共同参画」の意味を問い直す機会の損失
第6章 箱モノ設置主義と男女共同参画政策 ー 国立女性教育会館(ヌエック)(斉藤正美)
1 ヌエックや男女共同参画センター事業とのかかわり
2 ヌエック問題とは
3 ヌエックと男女共同参画センター設立の背景
4 婦人教育・女性教育
5 運営体制
6 ヌエックと全国女性会館協議会
7 箱モノ設置主義と意識啓発事業の限界
第7章 フェミニズムとメディア、インターネット (山口智美・斉藤正美)
1 フェミニストのメディア活用の現在
2 女性学の書籍刊行と女性運動 ー1980年代
3 「ジェンダーとメディア研究」と行政 ー1990年代
4 フェミニズムによる情報ネットワークの構築 ー1990年代
5 「バックラッシュ対抗」をうたいはじめてから ー2000年代
6 フェミニスト・メディアの今後にむけて
結びにかえて (荻上チキ)
あとがき
調査記録/参考文献
人名索引/事項索引
書評・本の紹介など
- 東京新聞「こちら特報部」2014年7月31日
- 武田興欣氏「フェミニストらによる地方政治での草の根保守主義の分析」『レヴァイアサン』54号:145-148
- Radio2.4km@youtubeRadio24km No.167 review vol.2 [ 社会運動の戸惑い ]Radio24km 2014年1月10日
- 菅原亜都子氏『社会運動の戸惑い』を寝る直前にうっかり… 「私らしくはたらく研究所」2013年12月30日
- 吉仲崇氏『社会運動の戸惑い』書評 『論叢クィア』第6号 2013年
- 宇部日報 2013年6月14日 「著書を「男女共同参画」議論のきっかけに 宇部の推進条例を題材に問題提起 山口智美さん(米モンタナ州立大助教)」
- 中日新聞 2013年5月13日 性差別解消へ議論白熱 富山で男女共同参画講座
- 岡本明子氏「そして誰もが不幸になったー男女共同参画の10年」月刊『正論』2013年6月号
- 渡邊光氏(編集者)著者・編集者からの紹介『社会運動の戸惑い』Women’s Action Network (WAN)
- 中日新聞 2013年4月5日 「この人」斉藤正美(東京新聞には4月8日に掲載)
- 『中日新聞』<はたらく>「女性の自立」空回り 各地の男女共同参画センター著者のひとり、斉藤正美への取材と本への言及あり。
- 『毎日新聞』2013年3月24日 今週の本棚・新刊:『社会運動の戸惑い』
- 『つながる/ひろがる/フェミ・ジャーナル ふぇみん』 No.3017 2013年3月15日号 「ふぇみんの書評」
- 『國民新聞』2013年3月号「読書欄」
- 『朝日新聞』2013年2月10日 中北浩爾氏(ニュースの本棚)「自民党政治の行方 保守主義から「右傾化」へ」
- 田村哲樹氏「社会運動は「戸惑って」いるのか? ―― あるいは、「失われたもの」をどのように取り戻すのか?」αシノドス Vol.117 2013/2/1シノドス・ジャーナル2013/2/22
- 千葉展正氏「『男女共同参画天皇への道』??フェミニズム皇室典範が天皇を滅ぼす」ブログ 2013年1月18日「山口智美・ 斉藤正美・荻上チキ著『社会運動の戸惑い』(勁草書房)書評」2013年1月22日「『社会運動の戸惑い』再論」
- イダヒロユキ(伊田広行)氏「ソウル・ヨガ」ブログ 2013年1月21日「小手先のコミュニケーションーー思想の視点がない」(註:本書の書名や著者名は記事内で言及されておらずソースが記されていませんが、本書と同一の文章が使われている箇所があり、本書の内容の議論を含むので、書評として紹介しておきます。)
- のら猫の手氏ブログ「思いつくままに 『社会運動の戸惑い』批評」
- Masuki, Info, Desk 「推薦図書」一覧、『社会運動の戸惑い』
- マルコ氏「西方見聞録」ブログ 2013年1月16日「対話がなくて、会話と対論がある‐「社会運動の戸惑い」を読んで」
- 一橋大学大学教育開発センター 二宮祐研究室「茶会」 1月14日
- 北丸氏「たぶん月刊北丸」ブログ2013年1月16日 「山口智美・斉藤正美・荻上チキ『社会運動の戸惑い』/高山文彦『どん底 部落差別自作自演事件』」
- ジキルとハイドの読書家氏「古本虫がさまよう」ブログ2013年1月7日「フェミニストと反フェミニストとの知的会話を楽しめる一冊?」
- 冠野文氏「乱読大魔王の『We』周辺記事」ブログ2013年1月7日「社会運動の戸惑い フェミニズムの「失われた時代」と草の根保守運動(山口智美、斉藤正美、荻上チキ)」
- ながみ氏「フキゲンさん」ブログ 2013年1月6日「なるほどなるほど」
- 「紙魚の目」ブログ2012年1月2日「フェミニズム運動とジェンダーをめぐる政治???」
- font-da氏「キリンが逆立ちしたピアス」ブログ2012年12月31日「今年の5冊」
- 『宮崎日日新聞』2012年12月30日「読書 みやざき関連ブック」
- 『社会新報』12月26日 栗田隆子氏書評『「知ろうとしなかった」ことの反省』
- 鴨野守氏(前世界日報編集委員)読後感想文
- 金明秀氏(関西学院大学社会学部)関西学院大学先端社会研究所『社会運動の戸惑い』読書会でのコメント
- 山田真裕氏(関西学院大学法学部)関西学院大学先端社会研究所『社会運動の戸惑い』読書会での書評コメントスライド資料
- 『朝日新聞』2012年12月16日 中島岳志氏(北海道大学准教授)書評
- lessor氏「lessorの日記」ブログ2012年12月13日「「悪魔化」される保守の内実」
- 『世界日報』2012年11月19日 「おすすめ本」書評。「フェミニストがみた保守派の実像」
- 『聖教新聞』2012年11月17日「社説」にて、当書の紹介、引用。
- Togetter 『社会運動の戸惑い』#tomadoi感想ツイート集
- Togetter 『社会運動の戸惑い』#tomadoi感想ツイート集その2
- 「フェミナチを監視する掲示板」スレッド[72976]
- Amazon.co.jp レビュー
- 読書メーター レビュー
- Booklog レビュー
- 「チキのテクスト・社会運動の戸惑い」ニュースの深層
誤植・訂正(一刷)
ダウンロード (PDF)
章 | ページ | 誤 | 正 |
---|---|---|---|
第一章 | p.7 | 亀田温子・舘かおる『学校をジェンダーフリーに』(亀田・舘 2000) | 亀田温子・舘かおる編著『学校をジェンダーフリーに』(亀田・舘編著 2000) |
第二章 | p.63 | 同書は、ウーマン・リブを | 同書では、ウーマン・リブを |
第三章 | p.130 | 図3.3 | 図3.2 |
第四章 | p.155 | 日高幸明 | 日髙幸明 |
第五章 | p.206, 231 | 船橋市西図書館事件 | 船橋市西図書館蔵書破棄事件 |
第五章 | p.213 | ゆとり珈琲店 | ユトリ珈琲店 |
第五章 | p.245 | 保守系ジャーナリスト鴨野が推進員として活躍しているという事例 | 保守系ジャーナリスト鴨野の事例 |
第七章 | p.299 | Wink (Women in Kansai) | WinK (Woman Internet Kansai) |
第七章 | p.301 | 女性・ジェンダー学者 | 女性学・ジェンダー学者 |
第七章 | p.322 | 「フェミニズムとインターネット問題を考える」研究会 | 「フェミニズムとインターネット問題研究会」 |
第七章 | p.339 | 長峰市長 | 長峯市長 |
参考文献 | p.xiii | 『日本のフェミニズム』全8冊 | 『日本のフェミニズム』全8巻 |
参考文献 | p.xiii | WINK (Women in Kansai) | WinK (Woman Internet Kansai) |
参考文献 | p.xvii-xviii | 第五回検討会配付【資料2】「論点1ヌエックの創設の経緯と成果について(検討メモ)」 h t t p : / / w w w . m e x t . g o . j p / b _ m e n u / s h i n g i / c h o u s a / s h o u g a i / 0 2 6 / s h i r y o / a t t a c h / 1 3 2 3 2 8 6 . h t m | 第五回検討会配付【資料2】「論点2日本の男女共同参画の現状と課題について(検討メモ)」 h t t p : / / w w w . m e x t . g o . j p / b _ m e n u / s h i n g i / c h o u s a / s h o u g a i / 0 2 6 / s h i r y o / a t t a c h / 1 3 2 3 2 9 1 . h t m |
参考文献 | p.xxiv | ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)の争議問題・まとめ | ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)の労働争議・まとめ |
人名索引 | p.i | 鹿嶋敬 145 | 鹿嶋敬 144 |
人名索引 | p.i | 亀田温子 2 | 2を削除 |
人名索引 | p.i | 今大地はるみ | 202を追加 |
人名索引 | p.i | 鹿嶋敬 145 | 鹿嶋敬 144 |
人名索引 | p.ii | 橋本ヒロ子 102-110 | 橋本ヒロ子 102, 104 |
人名索引 | p.iii | 来住一人 181 | 来住一人 181-182 |
人名索引 | p.iii | 日高幸明 | 日髙幸明 |
事項索引 | p.iv | インターネット | 124-削除、152-153追加 |
事項索引 | p.iv | 過激(な)29-35 | 29-33に訂正, 331を削除 |
事項索引 | p.iv | 家族の破壊/解体/否定 34, 63-64 | 35, 63 |
事項索引 | p.v | 健全な男女共同参画条例をつくる都城市民の会 94 | 健全な男女共同参画条例をつくる都城市民の会(都城市民の会)194 |
事項索引 | p.v | 国立女性教育会館 56 | 国立女性教育会館 55 |
事項索引 | p.v | 事業仕分け | 278を削除 |
事項索引 | p.v | 市民参加 65-69 | 市民参加 65-67 |
事項索引 | p.v | 自民党 121-154 | 自民党 154 |
事項索引 | p.vi | 社会教育施設 | 254-257, 263 を追加 |
事項索引 | p.vi | 条例専門部会 145 | 条例専門部会 144 |
事項索引 | p.vi | 女性学・ジェンダー学者 48, 267-275, 284−287 | 女性学・ジェンダー学者 48を削除, 267-281, 283−323 |
事項索引 | p.vi | 性教育 33-36 | 性教育 33-35 |
事項索引 | p.viii | バックラッシュ派 113, 147-148 | バックラッシュ派 112-113, 147-153 |
事項索引 | p.viii | 表現規制 146 | 表現規制 145 |
事項索引 | p.vix | フィールドワーク 52 | フィールドワーク 51 |
事項索引 | p.vix | ふくい男女共同参画推進員 218-229 | ふくい男女共同参画推進員 217-229 |
事項索引 | p.vix | 婦人会 67, 257-259 | 婦人会 66, 257-260 |
事項索引 | p.vix | モデル条例 48 | モデル条例 49 |
事項索引 | p.x | (空欄) | GSML(ジェンダースタディーズメーリングリスト) p.234, 309-311, 323 |
著者略歴 | 奥付 | 萩上チキ | 荻上チキ(おぎうえ ちき) |
上記のほかに誤植を発見したら、こちらからご連絡ください。
関連研究会や読書会などの情報
『社会運動の戸惑い』に関連した、研究会や読書会、その他のイベントの情報です。
- 2012年12月16日(日)2:30-5:00pm @ 関西学院大学
- 2012年12月21日(金)16:15-@早稲田大学フェミ研
- 2013年5月11日(土)14:00-15:30 「知られざる男女共同参画の光と影、そして未来」講師:斉藤正美@とやま市民交流館 学習室1CiCビル3階)
リンク集
- 「ジェンダー・フリー」をめぐる混乱の根源
本書で触れている、バーバラ・ヒューストンの「ジェンダーフリー」の誤読について山口智美が以前書いた文章(We誌掲載)
- 「ジェンダー・フリー」論争とフェミニズム運動の失われた10年
本書で引用しているバーバラ・ヒューストンの「ジェンダーフリー」の誤読についての山口智美の文章(『バックラッシュ!』掲載)
- バーバラ・ヒューストンが説く「ジェンダーフリーの本当の意味」
バーバラ・ヒューストン氏本人による「ジェンダーフリー」概念についての短文(和訳が『バックラッシュ!』キャンペーンブログに掲載)
- 『バックラッシュ! なぜジェンダーフリーは叩かれたのか?』
バーバラ・ヒューストン氏と、ヒューストンが多くを依拠したジェーン・マーティン氏への山口智美が行ったロングインタビューが掲載
- mixi内でのバックラッシュをめぐる議論に関して:「社会運動とネット、メディア研究会」報告内容メモ (山下渉)
SNSのmixiの「フェミニズム」コミュニティの管理人のご経験をもたれる山下渉さんによる、mixi内での「フェミニズム」をめぐる議論についてご報告のメモ
- 男女共同参画条例:男女共同参画政策への反発を「バックラッシュ」と呼びたくないわけ
『ふぇみん』2002年9月25日掲載記事(記事タイトルは「足下でしっかりと対策を練ること」)。
- フェミニスト会話分析をめぐって──小宮『実践の中のジェンダー』への斉藤正美さんのコメント
『社会運動の戸惑い』への小宮さんのコメントをきっかけとしてはじまった、斉藤正美さんと小宮友根さんの『実践の中のジェンダー』を巡るやり取り。
- 「性的指向」を明文化した条例が制定されていた!
「ジェンダーとメディア・ブログ」掲載記事(斉藤正美)